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食を考える…山東昭子さん





実験では朝食抜きだと学業成績が下がる
いかに食べるかを教える食育が重要

―●食育の問題とも関わってきますが、多摩は今、子どもたちの個食が問題になっており、働くお母さんたちが悩んでいます。
山東●働く女性が増え、お父さんは帰りが遅い、子どもたちも塾通いで忙しいとなると、家族のコミュニケーションもない、誰が何を食べているのかもわからない。一家の食生活はバラバラなんですね。
 それでも高齢者の人たちは比較的バランスのいい食生活をしてきているから案外、長寿で健康。ところが、今の若い人たちは外国から食べものが入って来た時代に育っているから、食生活のバランスがちょっと悪いんですね。だから、子どもたちも学校の行事なんかで貧血で倒れたり、骨折も多いですよね。イライラや落ち着きのなさも目立ちます。  人間、食べ溜めができるわけではありませんから、日々バランスよく食べていくことが大切。小さい時からいかに食べるかを教える、それが食育だろうと思うんです。特に気になるのは朝食抜きの家庭が増えていることです。
 こういうデータがあるんですよ。
女子栄養大学で自治医科大学の学生を対象に、朝食を摂ったグループ100人と朝食抜きのグループ100人の1年間の学業成績を比較したんです。すると朝食を摂ったグループがグンと成績が良かった。そこで、朝食抜きのグループから20人を選んで朝食を摂らせる実験をしてみたんです。そうしたら同じように成績がグンと上がったんです。やっぱり、朝食は食べなきゃね(笑)


―●山東さんは、ごはんを食べようという運動をなさっていますが、昔の日本人はお米が最高のエネルギー源でしたね。
山東●その良さがあらためて見直されています。日本でも小学生の糖尿病が問題になっていますが、これは世界的な傾向で、諸外国を歩いてみると欧米の子どもたちが栄養過多の食生活に陥っている。ですから、欧米では食生活を日本食に学ぼうとか、日本食を取り入れる動きが出ています。
 また、医療の現場でも西洋医学だけに偏らずに、漢方やマッサージなどの東洋医学を取り入れた代替医療が注目されています。そういう意味では、食の分野、食と密接に結びついた医療の分野でも、日本が世界の中でリーダーシップを発揮しなければならない時期ではないでしょうか。

たくさん出回っている健康補助食品も
安全性や品質などの基準づくりが必要

―●日本では30兆円という医療費をどう抑制するかが頭の痛い問題ですが、病気にならないための備え、病気予防の自覚を持つ必要もありますね。
山東●今、日本では普通に生活はしているが何となく体調が優れないという、いわゆるグレイゾーンの人たちが60%もいるんです。だから健康補助食品も市場にいっぱい出回っているんですよ。ただ、自分に合うのもあれば、ちょっとどうかなというクエスチョンのものもあります。公的には消費者が安心して選べる安全性や品質などの基準づくりが必要ですし、家庭においてはお母さんたちに健康を補助する食品の知識を持ってもらうことが必要ですね。

―●健康補助食品についてのアドバイザーの養成講座を開くことが計画されているそうですね。
山東●(財)日本健康栄養食品協会で今年の10月に予定しているんですが、これはお医者さん、薬剤師さん、栄養士さん等の医療分野におられる人たちと、健康食品を扱っている企業のスタッフの人たちに食品の持つ専門的知識を修得していただき、利用する消費者に、安全性や、適正な摂取方法等について勉強してもらおうという試みです。
 これまで医療の分野では西洋医学が中心でした。ですから、健康補助食品について懐疑的な人たちもいれば積極的な人たちもいます。そういう人たちが、健康を補助するための食品として、正しく理解し、商品を選ぶ時の目安になることが大切だと思います。
食卓の褒め上手、会話上手は
思いやり、気配りを育てる心につながる

―●こうして考えてみると、私たちの食生活は本格的に見直しの時期に来ているようですね。
山東●家庭レベルの問題で言えば食卓にコミュニケーションがないことが気になりますね。私の世代は食事は黙って食べろという教えがありました。
 しかし国際化時代、今の子どもたちが大人になった時は、外国の人たちと食事をしながら会話や議論をするという時代になると思うんですね。その時、ただ黙ってナイフやフォークを動かしているのでは相手にされません。
 食事をしながら上手に会話をする、これも一朝一夕に身につくものではありませんから、子どもの時からの訓練が大切。
 それから日本人の男性は褒めることが非常に不得手です。ある男性たちの集まりで講演する機会があった時に、「奥さんの手料理を褒めたことがありますか」と聞いたら、「いや、まずい時だけまずいと言う」と。それじゃあダメですよ、奥さんもやる気がなくなっちゃう。(笑)
 女性はおいしいなと言われれば、また作ろうと張り切るわけです。両親のそういう姿を見て育った子どもは、結婚して家庭を持ってからも自然に奥さんを褒めますよ。食べながら会話をしておいしいものはきちんと褒める、これは食の家庭教育ですよね。
 それがひいては学校や社会においての精神的な思いやり、気配りにつながっていくと思います。
お父さんはどんな仕事をしているのか
学校と連携しての「父親参観」のススメ

―●そういう意味では、子どもの時から地域、学校と連携して社会体験をするというのも大切ですね。
山東●それについてはアイディアがあるんですよ。今、父親が教育の面で割合不在ですよね。特にサラリーマンはPTAや授業参観だからといって仕事を休めません。だから自宅で商売をやっているお父さんや自宅の一部を事務所にしているお父さんたちに比べて存在感が薄いんです。
 そこで、学校教育の一環として、子どもたちが父親の仕事の現場を訪ねて、どんな仕事をしているのか見せてもらうんです。「授業参観」ならぬ「仕事参観」ですね。(笑)
 それから、チャリティとかフリーマーケットとか地域の人たちが中心になってのイベント、活動が盛んですが、その舞台裏に子どもたちも参加してもらうんです。
 ひとつのイベントが開催にこぎつけるまでには、さまざまな苦労や細かな交渉事がありますが、できることは子どもにもやってもらうんです。すると自然に「ああ、こういう仕組みでこれだけ時間がかかって、こういう人たちの協力で成り立っているのか」と理解できますよね。それにうまくできたら、褒めてあげれば達成感を味わう亊も出来るし自信もつきます。何よりも子どもの教育にも大いに役立ちますしね。
 大人の流す汗を見ることで、父親に対する尊敬の念が生まれ、社会に対する感覚、接し方も身につけていくんじゃないでしょうか。家庭、地域、学校がうまく連携すれば、父親の不在だって上手にカバーできるアイディアが生まれるんですよ。不在や不足を嘆くよりも、そういう発想が大切です。
―●いろいろと貴重なお話、ありがとうございました。
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