多摩の手仕事 五感をとぎすましてミリ単位で調整する

ピアノドクター(調律師)
市川哲男さん(68) 
町田市


写真: 五感をとぎすまして
ミリ単位で調整する
 ピアノは耐久性の優れた楽器で、響板とフレームさえ割れていなければ、磨耗した部品をこまめに換えると何年でも持つ。中でも、一九六〇、七〇年代のピアノは全てにおいて良質なパーツで作られているため、新品のピアノよりも柔らかな音色を再現できるのだとか。
 実は、近年のピアノ業界では、中古ピアノの需要が国内外を問わず急激に伸びている。そのためにも、修理等が完璧にできる技術者の存在が不可欠になっているのだ。
 中古ピアノを自社工場で修理・調整・塗装して、完璧な状態にして出荷しているのが『流通ピアノセンター』。そこで働く市川哲男さんは、ピアノの調律を中心に修理・調整を手掛けて、約50年になる。一昨年に97歳で亡くなった父親がピアノの調律師で、市川さんも含む4人の息子と共にピアノを製造することを夢見ていた。その夢に従うように、4人とも楽器会社へと就職、技術を身につけていった。
市川さんの手づくりの道具たち 工場勤めを振り出しに店舗勤務、独立しての一戸一戸の家庭回り、そして現在の工房嘱託と、市川さんの仕事の受注の形態は変わっていった。しかし、その姿勢は一貫している。
「とにかく自分の技術の向上を目指してやってきました。どこか改良するところはないだろうか、もっとあるはずだ。もっと幅広くお客様の要求に答えていきたい。探究し続けたい。単に直すだけの技術者だとそこで止まってしまう、自分自身に進歩がないと思うんですよね」
 手先の器用さも幸いして、市川さんは修理に必要な道具迄も自分で作ってしまう。ミリ単位での細かい仕事だけに、市販の道具では補えない部分が多分にあるのだという。そんな市川さんの道具袋には、父親が手作りして使い続けた飴色に輝く道具も入っていて、市川さんの仕事に役立っている。
 また、『流通ピアノセンター』では、ピアノの販売の他に、ただの音合わせだけの調律師ではなくピアノの病気を完璧に直すピアノドクターを育てる「養成所」も設ける。市川さんはそこでの講師も勤める。 「技術者として生きてきて、60歳を過ぎてふと思ったことが後輩を育てようということでした。今は、自分の技術をいかに次の世代に伝えていくかを考えています。後輩を育てていきたい。とにかく安心できる迄教えこんでいきますよ」と。

流通ピアノセンター
町田市図師町1540-1
TEL042-793-0956
http://www.rpc.co.jp

(取材・構成/(有)多摩ネットワークセンター 
「もしもししんぶん」)

バックナンバー 
竹細工 桐箪笥 伊勢型紙 傘職人 
ピアノドクター アンティーク時計修理